脾 臓
門脈圧亢進症
● 疫学
腸管と脾臓からの血液が合流し、肝臓へ流れ込む太い血管を“門脈”と呼びます。門脈圧亢進症とは、何らかの原因で肝臓にむかう門脈の血流が滞り、その血圧が上昇した病態です。門脈圧亢進症の約8割は肝硬変が原因と考えられています。そのほか、特発性門脈圧亢進症、肝外門脈閉塞症、バッド・キアリ症候群が原因としてあげられます。
● 症状
病態が持続すると脾臓が大きくなったり(脾腫)、腹水がたまったり、食道や胃に道静脈ができます。脾機能が亢進すると、貧血や血小板が少なくなります。
● 検査、診断
超音波検査やCTで、拡張した腹腔内側副血行路や脾腫が認められます。胃食道胃静脈瘤の診断には内視鏡検査を行い静脈瘤の形態、色調から出血リスクを評価します。
● 治療
門脈圧亢進症に対する治療は肝硬変や静脈瘤の治療、つまり食事療法、薬物療法、内視鏡やカテーテル治療が主体となりますが、これらの治療に不応な場合、外科手術を行うことがあります。具体的には門脈に流入する血流を減らす目的で、脾臓摘出術や胃上部の血行郭清を加えたHassab手術を行う事があります。
悪性リンパ腫
● 疫学
悪性リンパ腫は、日本の成人では最も頻度の高い血液腫瘍です。血液中の「リンパ球」ががん化した疾患であり、主にリンパ節、脾臓および扁桃腺などのリンパ組織に発生します。胃、腸管、肝臓などの腹腔内臓器に発生することもあります。
● 症状
首や腋わきの下、足の付け根などリンパ節の多いところに、痛みの伴わない腫れやしこりがあらわれます。また、発熱や皮膚の発疹や腫瘤など、さまざまな症状があらわれることもあります。
● 検査、診断
病気の診断のために、腫瘍組織を採取することが必要になります。腫瘍の発生した部位、組織型によって治療方針が異なるため、正確な病理組織診断を行うことが重要です。その他、病気の広がりを調べるためにCTやPET/CTなどの画像検査を行います。
● 治療
悪性リンパ腫の治療は、化学療法と放射線治療が中心であり、血液内科が治療を行います。当科では組織診断を行う目的で、腹腔内にできた悪性リンパ腫を一部切除することがあります。